8月(狂い咲き)
飽きてもう満腹で思い出したくもないってくらい、釣りに
明け暮れてみる。……なんてズーット胸に抱いてきた
から一度弾みがつくと止まらない。

ネット釣友の客人と夕日に染まったいつものポイント
で、いつもの大アジを釣り上げたのが11日の夕方。
少し明るいうちに出かけ、竿を下ろして直ぐに反応が
あったから、これはと期待したがあとが続かない。

ポイントを2度、3度替えてみたものの、まるっきりダメ
で、太陽が山の影に隠れ、すっかり暗くなってギブアッ
プ寸前で様子が変わった。入れ食いの気配である。
でも、時すでに遅し。
暗くなると、まるで神隠しみたいに姿を消してしまい
アタリがなくなるのである。

笑顔がかわいくてステキな地元の青年
一週間に一度あるかないかの大物を仕留めました。

でも、わずかなヒトトキに集中打的釣りでオミヤゲが
出来たから、満腹と言えなくてもせめて腹八部の満
足で納まってくれれば良いが。
客人は、ふだんから五ヶ所湾に何度もきていながら
ウデの未熟もあってか、なくてか、そこのところよく分
からんが、とにかくイイオモイをしたことが一つも
なかったから、これでどうにか悪い風評もたてられず
に済みそうだ。

「五ヶ所湾なんて、役(やく)所湾じゃあねえか、ただ
で銭(エサ)ばかりついばみやがって、情報(ポイント)
公開をきっちりやれっ!」 ってね。

客人が帰る次の日は、朝から風が強く、それはどう
も台風が発生したらしく入り江一面が波立っている。
釣りなんてとても無理で3〜4日は絶望だなあ、と後
ほど新聞で知ってからは五ヶ所にいることが急につ
まらなくなった。
落ち込んだ気持ちを高めるためには、釣りに掛ける
しかない。

毒を持って毒で制すだ。
台風が本格化する前に、ひとカセギしようと13日の
早朝に船を出すことにした。
朝だから波も少ないようだし、ひとりきままな釣りを一
度は味わっておかないと、都会に戻ったときの順応化
に悪い影響をあたえては困る。

風がさほど強くないので台風の目に入ったかなと思っ
たほど、風の怖さを感じない。
天気予報通りだと、かなり荒れているはずなのに。
そして、夕方。
台風の本格化には、まだ間に合うなと急いで3度目の
船を出した。
バルコニーから眺めて、写真の中央を拡大して
みると
ほれ、ご覧のとおり毎日通う爺さん連中です。
みなさん70歳近くで、真夏の太陽なんのその。
伊勢から軽四で相乗りして、ボートは浜辺に自主
保管。ボートグッズも目を見張るものがあって驚
いてしまいます。チヌ釣りの合間に子アジのサビキ
釣り。どちらがメインの釣りでしょうか。

14日の朝は、朝寝坊して目を覚ますと、いつもの暑い夏
の空ではないか。
いったい台風はどこへ行ったんだろうか、と途端に嬉しく
なってしまうくらいの青空だ。
せっかく、トリダメした釣りをここで萎えさせる訳にはいか
ない、一度踏み込んだ世界はトコトン見極めてやろうじゃ
あねえか、ってんでその日の夕方に、またまた船を出す
ことにした。

人間、遊びの世界を知ってしまうと怖い。
飲む、打つ、買うで、どれだけウブな善人が身上をつぶし
たことか。ボクの祖父は酒に溺れ、女に狂って財産をスッ
テンテンにしたと噂に聞いている。
隔世遺伝を恐れたボクは、幸いにも酒は弱いし、女性には
めっぽうモテルので不自由してないし、、これは危ないと思
うイイ女には極力近づかんことにしている。
でも、我を忘れるプロセスだけはしっかり受け継いでいるみ
たいだ。

次の日も朝早く船を出し、その日の夕方も船を出して真っ
暗の中を帰ってきた。
もちろん、名古屋に帰る日の朝も小鳥の鳴き声以前に早々
と目覚め、しっかり船を出したのだ。
しつこく、六日間で七回の釣りまくり。
釣った大アジ、しめて60匹あまり。
もう釣りなんざあ飽きたねえー、しばらくやりたかあねえー
や、と言ってみたーい。

空高き秋に、ウロコ雲をみるのもそろそろかな。
都会に帰って一晩過ごすと。
もっと釣りたーい。ときちゃあ、どうする。

夕方のこの時間からベストタイムイン
よいこの客人と小生の第一声の協同産声です。