ゆらりと


若いときの夢をみる。
きまって同じシーン、オロオロと職員室の前をうろつく。
卒業するのに単位が足りないのである。
クラスメートのほとんどが就職内定しているというのに。
担当教授が言った。
 「卒業の見込みがないから就職はあきらめな。
  クラスでトップだよ君は」

単位不足を棒線グラフなんかで示して、
だれが一番か、ひと目で分かるようになってた。

「富山の、田舎のお袋が必死に働いてて、
 卒業だけを楽しみに・・・センセイお願いです!」
 
泣き落としと貢物(ウイスキー)に望みを託した半年。
追試に明け、追試に暮れた日がつづいた。


姿を消し、どこへ行ったかと思いや、
近所の堤防で釣りをしていた。
そこはもう夏休みだった。

ちょうど同じ頃
奇しくも同じ校内で、同じ障害で喘いでいたオトコがいた。
留年生活、まると2年間。
彼には追試の機会さえ与えられなかったのだ。

お互いの遍歴を知ったのは卒業後、間もなくであった。
あれから30年と幾年、彼も当時の夢をみるという。
挫折と敗北がたっぷりスリコマレ、それを今だに背負って
いるのだ。

そんな悪夢から逃れられるとしたら、
それは少年に戻るとき。



五ヶ所では勝手に遊ぶ。
おたがいクッツカナイのが最高である。
ビールを飲みながら一人のんびり岸釣りがイイという友を残し、
ボートを出した。

今年になって初めてのひとり釣りだ。
群れてないと遊べないのが大人、
ひとりっきりでも遊べるのが少年。
つくづくそう思うなぁ。

去年と同じポイントを探ってみた。
全く釣れない。
糸がロープに引っかかり、それを外して
いたら重いモノが付いてきた。
釣れた?ときは
どうもこんなパターンが多い。





......