ひるね
海辺で一番楽しみたかったことは何か。
もちろん釣りとか土いじりとかいろいろあるが、現在の今
は、なんと言ってもただただノンビリすること。
とくに真夏の昼下がり、シャワーを浴びてすっきりして昼
寝をすることに尽きる。畳の上で大の字になって寝転んで
いると、海からの風が心地いったらありゃしない。

木立に囲まれた入り江の奥にあって人の気配がまるで
ないし、不気味なほど静かだから昼寝がぴったしハマル。
濃密な自然の風に吹かれていると、寝入ってしまうのが
もったいなくて時々目を覚ましては、今の心地よさを楽し
む。
階段が完成し、つまづくこともなくなりました。
かつてはハンモッグのような便利な寝床を活用して、人
気のない神社の境内や海岸の松林で昼寝を楽しんでい
たが、やはり畳の上のほうが寝返りも打て、シックリ落ち
つく。
しかも一人でのほうが、気使い不要とあってパンツ一枚
で安心していられる。
ぜいたくと言えばこれ以上のぜいたくが見当たらない。

なにもないということ。
たとえば静かで騒音の一切がない。
機械類はもちろん、人サマから出る騒音を聞かなくてす
むのが誠にありがたい。
芝を刈り取ったばかり、バカまるだしのワタクシ
そのうえ、香水が嫌いなのでケバイ臭いも嗅がなくてす
む。
それから無秩序で私欲の化石に違いない建物や街並み
なんか、タダレタ文明の洪水を見ないですむ。
みんなナイナイずくしでナンニモないから、かえってシアワ
セだなあー、と思えてくる。

開け放した小屋にパンツ一枚でやすらかに昼寝ができる
環境があれば、他にナンニモいらなくて済むや、と思える
ようになった。
ようやく気づいたのだ。
貧乏にしてはとんでもない大金を投じ、6年以上の歳月に
汗を流してコツコツ築いてきたものはこれだったのだと。
73才、現役のドカタです。爺さんと話し込んでいると
時を忘れてしまいます。東京の大学にいるカワイイ姉妹
の孫娘が帰省するのを、今か今かと待っています。


だから、海からの心地いい風が吹いてくると五感を研ぎ
澄ませ、毛穴を全開させてシアワセを精一杯吸入こむの
だ。

だけど大口を開けてヨダレを垂らして寝ていては、せっか
くの恵みも水の泡なんだなぁ。
寝転がっていると、「自信作」ロックガーデンが
目にやさしく留まるのです。