最初に建てた小屋
です。
真珠の作業小屋が
あった所です。
手前の道を下ると
直ぐに海
決め手

敷地の隣に、朽ち果てた真珠の作業小屋がとり残されていた。
思わぬ興奮を覚えたのは、その前を通り過ぎて海辺に降り立った時のこと。
水がとてもきれいだった。
3月の下旬、 海が一番透明な季節。

土地を物色している他の客の存在も気になったが、決め手は森に囲まれた
海の透明な輝き。
気に入れば他人の声に耳を傾けない偏狭者と、妻も最初からあきらめて、
まともに話に乗ってくれない。

春も終わりに近い頃、ついに手に入れてしまった。
衝動買いとは良く言ったもので、その通り。
しかしその後が、予想もつかないやっかい事が続くことになろうとは……。

当分はテントでも張れるぐらいの平坦地を造成し、将来ゆっくりと切り開いて、
徐々にでも小屋でも建てればいいのだと呑気に考えていた。
だが、水道を引かないことには、テント生活といえども不便でしようがない。
まして、肝心のボ−トも釣り道具も洗えない。
さっそく役場へ。

しかし、これが一番の難題だった。
水の許可は浸透式といえども、排水先の入り江を管轄する漁業組合の認可が
必要とのこと。
さらに、敷地に接するのは私道である。
この私道に布設されている水道本管も私有ときている。
持ち主の許可を得なくてはならないが、古い時期のものであり、管の太さから
他人に分岐しうるだけの余力がないことも分かってきた。

水が無ければ、どうしようもない土地である。
仮に井戸を掘っても、塩っ辛い海水では何とも仕様がない。
水を確保するために、克服すべき幾つかの障害が見えてきた。