昼間からくつ
ろぎに来られ
る太郎さん。
いつもの特定
席。
せっかく植え
た玉竜が心配
交流

暑さに喘ぎながら、我が家の建築中の足場をよたよたと歩いていたら、ふと
下の方に気配を感じた。

「やあ、太郎」

ギラギラの太陽がしっかり真上に居座った夏の昼下がり、つぶらな瞳と、つぶ
らでないボクの瞳が交わった。
いつも会う場所ではないので面食らったが、こうしてきっちり挨拶にきてくれるか
ら律義なやつなんだよな。

挨拶が済むと、すかさず帰られる。
とにかく、鳴きも吠えもせず、いつのまにか視界に現われて消えてしまう。
ねだるでもなし、媚びるでもなし、かといってビクツイテいるわけでもない。
じつに堂々とあっさりして、人間社会では数少ない人種だ。
度胸のよさといい、真昼の放浪性に孤高さは、タヌキにしておくにはとても惜
しい。
「太郎」改め、高倉の「ケンさん」と呼んでみたい。

あまりの無警戒ぶりに、最初はガキかプッツン野郎かと思ったくらいだが、しみ
じみ観察してみると、他のタヌキに比べて毛並みが硬くて密集度も薄そうで敏捷
性に欠けているみたいだ。
どうも若くはねえな、 と疑いの目を差し向けると途端に背中を向け帰り支度をはじ
める。相手のココロを読んでしまうなんてホントニ、「動物的かん」だ。

薄くなった毛と、身体全体に漂う哀愁。
あっ…ボクと オ ン ナ ジ。
「オジィ かあ」 、と思わずヨロコビ叫んでしまった。

お互い立場が違えど、分かるときには分かり合えるもの。
2人きりでいると感情が風にからまり、交錯し、しみじみとした時を過ごすのです。